契約書など、署名(記名押印)された文書は保管しておく必要があります。
しかし、どのように保管すればよいのでしょうか。
それでは、確認していきましょう。
保存が義務付けられた署名(記名押印)のある文書
契約書など、署名(記名押印)された文書は、その書面の種類や役割により、保管期間が任意のものと法定の保管期間があるものがあります。
法人では、総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳などの帳簿を作成しています。
その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類に対は、その年度の確定申告の提出期限から7年間の保存が義務付けられています。
帳簿記帳に係る書類として注文書、契約書、領収書などがありますが、それらの証憑についても、7年間の保管が必要です。
帳簿書類の保存は、紙による保存が原則です。
しかし、保存期間の最後の2年間(6年目以降。なお、一定の書類については4年目以降)は、一定の要件を満たすマイクロフィルムにより保存することができます。
なお、マイクロフィルムによる保存を行う場合には、一定の基準を満たすマイクロフィルムリーダまたはマイクロフィルムリーダプリンタを設置する必要があります。
保存が必要な署名(記名押印)文書
上記以外の文書を債権の保全等債権管理の目的で保存する時は、契約書や注文書は、少なくとも、その履行が完了するまで保存する必要があります。
契約書の内容や履行方法などに紛争が生じたときに、書面で確認することができるようにするためです。
裁判などにより支払や履行を強制するために、契約書は重要な証拠となるからです。
なお、これらの契約書や注文書は、紙のままで保存することが原則ですが、改ざん防止、タイムスタンプを付けるなどして証拠価値を失わないようにしておけば、契約や注文金額によっては、磁気的記録またはマイクロフィルムなどに記録して保存することも考えられます。
また、貸金業法では、借入人の最終返済が行われたあとに、契約書などの債権証書を返還すべきことが定められています(同法22条)ので、完済までは保管しておく必要があります。
他にも、免許、許可、登録が必要な業種に関しては、利用者(消費者)保護の観点から、監督官庁により立入検査や報告徴収等がありますので、これらに備えて保管期間を定め、いつでも取り出せるようにして保管しておく必要があります。
保存期間
法律に定めの特定の文書については、その規定された期間の保存が必要です。
(例:特定業者における本人特定事項の確認記録、取引記録等)
しかし、保存期間の規定がない場合は、税法や民法の消滅時効の規定および関係業法に準拠して社内規定を作成し、その期間に応じて保存することになります。
なお、その場合には、株式会社であれば会社法の内部統制システムの構築の観点からも、保存期間は定められる必要があります。
廃棄
保存している文書は、いずれ廃棄しなければなりません。
保存期間の過ぎた文書は随時廃棄する必要がありますが、契約書などの場合、
記載内容に営業上の秘密や顧客の秘密が含まれいていること、個人情報が含まれていることがあります。
確実に廃棄するためには、文書の重要度や内容の種類に応じて、溶解、裁断などに分けて処理することも重要です。
まとめ
法人では、帳簿を作成し、その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類について、その年度の確定申告の提出期限から7年間の保存が義務付けられています。
契約書や注文書などは、証憑として税務上の観点からだけでなく、契約の終了や債権が完済するまで、債権管理上の観点で、大切に保管することが必要です。
また、内部統制の観点や各種業法などで法人には一定期間の保存が義務付けられている書面がありますので、その間の保管が必要です。