【トリビア】印鑑照合

金融取引と印鑑

金融取引を行う際、届出印の照合(印鑑照合)が行われています。
どのような方法で行われているのでしょうか。
また、どのような注意が必要でしょうか。
それでは、確認していきましょう。

 

印鑑照合に関する最高裁判決の内容

最高裁の判決に、手形上の振出人の印影と届出印鑑との印鑑照合の「方法」および「注意義務」に関する最も重要な判例(先例となる判決)があります。

手形・小切手上の振出人の印影と当座勘定取引用の届出印鑑(印鑑票の印影)との照合方法は、

  1. 「記憶照合」
  2. 両印影を平面に並べて肉眼で比較対照する「平面照合」
  3. 手形・小切手振出人の印影を印鑑票に重ね合わせ、上下に動かして「その残影によってい」、あるいは印影部分を折り曲げて印鑑表に折り重ね、折口が一致するか比較対照する「重ね合わせ照合」「折り重ね照合」
  4. 「拡大鏡による照合」

がありますが、この最高裁判決は、原則として「平面照合」で良いとしています。
すなわち、銀行が、自店を支払場所とする手形について、取引先の振り出した手形であるか否か確認するため、届出印鑑と当該手形上の印影とを照合するにあたっては、特段の事情のない限り、「折り重ね照合」や「拡大鏡等による照合」の必要はなく、肉眼による、いわゆる「平面照合」の方法を持ってすれば足りるとしています。

その際の注意力については、社会通念上要求される金融機関の印鑑照合事務担当者として、「業務上相当の注意」をもって慎重に照合すればよく、このような事務に「習熟」している銀行印が、相当の注意を持って「熟視」するならば肉眼を持って発見しうるような印鑑の相違が見過ごされた時は、銀行側に過失があると判示しているのです。

 

印鑑照合の注意義務

さらに、当座勘定規定には「手形、小切手または諸届書類に使用された印影を、届出のはんこと相当の注意を持って照合し、相違ないものと認めて取り扱いましたうえは、その手形、小切手、諸届書類につき、偽造、変造その他の事故があっても、そのために生じた損害については、当行は責任を負いません」という免責約款がありますが、免責約款があるからといって、この注意義務が軽減されるものではありません
免責約款は、銀行において注意義務を尽くして照合に当たるべきことを前提とするもので、右注意義務を尽くさなかったため、偽造手形を発見できなかったという銀行の過失があるときは、当該約款を援用することは許されないとも判示しています。

なお、印鑑照合の方法が適切でも、個別・具体的な印鑑照合時の注意力については、「印鑑照合事務に習熟」している担当者が、社会通念上要求される「業務上相当の注意」をもって慎重に照合しなければなりません。
相当の注意を持って熟視するならば肉眼を持って発見しうるような印鑑の相違が見過ごされた時は、銀行側に過失があるとされます。
しかも、免責約款はこのような注意義務を尽くして印鑑照合をしていたということを前提として、免責約款が適用される、というものですから注意しなければなりません。

これに関連して、「銀行の預金払戻事務担当者が、払戻請求書に押印された印影と届出印巻・預金通帳の副印鑑とが異なっていることに気づかなかった(過失があった)場合でも、その両印影が、大きさが同一で、自体もほぼ同一であり、文字全体の印章は極めてよく似ていて、一部に認められる相違も、使用条件の変化等によって生じる範囲内のものと言えるなど判示の事情のもとにおいては、担当者のした印影の照合に過失はなく、この払戻は有効である」とし、債権の準占有者に対する弁済も有効とした最高裁判決もあります。
預金払戻請求書上の印影と届出印鑑を相当の注意を持って照合し相違がないと認定した場合は、たとえ預金の払い戻し請求者が無権利者であっても、金融機関の払戻は「善意」かつ「無過失」による弁済と解されました。

 

僚店での預金払戻しにおける印鑑照合

口座開設店以外の僚店での預金払戻しについては、普通預金の口座開設点に提出された普通預金取引用の届出印鑑は、「電子印鑑照合システム」により僚店の預金係(テラー)がコンピュータ操作で届出印鑑の画像を検出することができます。
預金払戻請求書上の印影をモニター上の届出印鑑の画像に近づけ、上記最高裁判決で示した注意をもって比較対照すれば(事故届出等がない限り画像照合を平面照合と同様の注意義務を尽くして行えば)、僚店での預金払戻しに問題はありません。
東京地裁の判決に、「電子印鑑称号システムは、各店に設置されている印影検索モニターによって払戻請求書の印影と照合するもので、従来の印鑑照合(印鑑票・副印鑑との印影照合)と同様、肉眼によって確認するものであるから、印鑑照合事務に習熟した職員が、社会通念上一般に期待される相当の注意を払ってその同一性について照合しても印影が酷似しているためその相違が見破れなかったが、太くて・多数人を対象とする短時間の預金取引を行う
金融機関の行った印鑑照合に過失はない」と判示しています。

 

まとめ

手形・小切手上の振出人の印影、預金払戻請求書上の預金者の印影と届出印鑑とを照合することについては、手形・小切手上の振出人の印影と当座勘定取引用印鑑の照合について「照合方法と照合義務」に関する最高裁判決に従うことによってトラブルを回避しています。
預金払戻請求書上の預金者の印影と届出印鑑との照合も、この最高裁判決を援用するのが一般です。

 

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