【トリビア】文書偽造の罪

印鑑・署名に関する事故

私文書偽造、公文書偽造と言う言葉を聞くことがあります。
私文書偽造、公文書偽造とはどのようなことなのでしょうか。
確認していきましょう。

 

文書の偽造が犯罪となっている理由

文書は、私達の日常的な社会生活において、権利・義務関係や一定の事実を証明する手段として重要な役割を果たしています。
私たちは文書が真実なものと信用しています。
このような文書に対する公共の信用を保護するため、文書偽造を犯罪としています。

 

有印私文書偽装罪(刑法159条1項)

有印私文書偽造とは、行使の目的を持って、他人の印章もしくは署名を使用して、権利、義務もしくは事実証明に関する文書もしくは図画(土地台帳付属の地図等)を、他人の名義を冒用(当事者の知らないうちに、名義・名称を不正に使うこと)して作成することを言います。

この権利義務に関する文書とは、私法上または、公法上の権利・義務の発生、消滅、変更を目的とする意思表示を内容とする文書を言います。
判例上、この文書に当たるとされたものとして、送金依頼の電報頼信紙、宛先のない借用証書、委任状などがあります。

また、事実証明に関する文書について、判例は社会生活に交渉を有する事項を証明する文書としています。
判例上、この文書に当たるとされているものとして、郵便局に対する転居届、私立大学の入試の答案などがあります。

偽造とは、原則として他人の名義を勝手に用いて文書を作成することを言います。
その本質は、名義人と作者の人格の同一性を偽るという点にあります。
したがって、文書の性質上、名義人以外のものが作成することが法令上許されない文書でない限り、名義人の承諾があれば、他人の名義を用いて上記の文書を作成したとしても私文書偽造には当たりません。
なお、判例上、文書の性質上名義人以外のものが作成することが法令上許されないものとされた文書として、交通事件原票(反則切符)があります。
また、下級審の裁判例ですが、承諾を得た他人の名前で私立大学の入試答案を作成する行為について偽造であるとしたものもあります。
有印私文書偽造罪に関連する罪としては、有印私文書変造罪、無印私文書偽造・変造罪があります。

 

有印公文書偽造罪

有印公文書偽造とは、行使の目的を持って、公務所または公務員の作るべき文書、図画を公務所、公務員の印章、署名を使用し、または偽造した公務所、公務員の印章、署名を使用し、公文書を偽造、すなわち、作成権限を有しないのに、名義を冒用して
文書を作成することです。
この公務所、または公務員の作成すべき文書、図画とは、名義人が公務所、公務員であり、これらが法令、内規、慣習等の作成権限に基づき、職務執行の範囲内において、作成されたものと信じさせるに足りる形式、外観を備えている文書のことを言います。
したがって、退職願や私的な挨拶状などは、職務執行の範囲内とはいえないため、公務所または公務員の作成すべき文書には当たりません。

偽造をするものとしては、非公務員の場合はもちろん、公務員でも、その具体的な作成権限に属しない公文書を勝手に作成すれば偽造になります。
また、上司である他の公務員名義の公文書作成事務を補助する任務を持っている公務員でも、作成権限が委譲されたり、正当な決裁がないのに勝手にこれらの文書を作成すれば偽造となります。
有印公文書偽造罪に関連する罪として、有印公文書変造罪、無印公文書偽造・変造罪があります。

 

印章偽造の罪について

刑法は、印章(印鑑や印影の他に、拇印や花押なども含むとされています)等の公共の信頼を保護するために、印章等の偽造、印章等の不正使用、偽造された印章等の使用を処罰する、御璽(ぎょじ)偽造・不正使用等の罪、公印偽造・不正使用等の罪、公記号偽造・不正使用等の罪、私印偽造・不正使用等の罪、各不正使用剤の未遂罪を定めています。

 

まとめ

私文書偽造、公文書偽造とは、行使の目的を持って他人の作成名義を偽って新たに私文書や公文書を作成することをいいます。
どちらも刑法に定められた犯罪です。