【トリビア】捨印・白紙委任状によるトラブル

印鑑・署名に関する事故

捨印を行って訂正印を押す手間を省くことがあります。
また、委任状を提出する際、一部白紙のまま提出することもあります。
しかし、トラブルも多いです。
捨印・白紙委任状によるトラブルが起こったときには、どのように対応すればよいのでしょうか。
それでは、確認していきましょう。

 

捨印・白紙委任状とは

捨印とは、契約書の完成前に、契約書などに訂正箇所が生ずることを予定して、
上部の空欄にあらかじめ押しておく訂正印の一種です。
取引慣習上、契約書に関して、ある程度は訂正してかまわないという権限を与える趣旨で押すものです。
どの程度の訂正が許容されるかは、契約当事者の意志によって決定されますが、一般的には、誤字・脱字や表記の統一が許容される訂正が限度だと考えられます。

他方で、契約内容の重要部分、具体的には契約金額、契約期間、契約当事者などは、捨印によって修正を許容したとは判断されにくいと考えられます。

委任状とは、ある人が第三者に一定の事項(例:土地の売却、訴訟の委任等)を委任するときに、その委任内容を記載した文書のことを言います。
白紙委任状とは、委任内容・事項や受任者の氏名を記載しないまま、一部を白紙で発行する委任状の一種です。
白紙部分の決定・補充に付き、相手方に権限を与える趣旨で作成されます。
実印が押してある白紙委任状と印鑑登録証明書があれば、受任者は法律的には多くの重大な法律行為(不動産の処分、金銭の消費貸借など)ができてしまいます。
したがって、信頼できる相手であっても、白紙委任状を作成・交付する時は十分注意すべきです。

 

想定されるトラブル

捨印については、契約内容を無断で書き換えられる、許容した訂正の限度を超えて契約を訂正されると行ったトラブルが起こる可能性があります。
具体的には、誤字・脱字の修正を許容する意志で捨印を押したにも関わらず、代金等の
契約内容の重要部分を変更されてしまう恐れがあります。

白紙委任状については、白紙部分が濫用される事故が起こる可能性があります。
具体的には代理人が、委任者が想定していない委任内容を記載したり、授与した権限を越えた契約などが行われる恐れがあります。
また、白紙委任状を交付された受任者が、委任者の意志に反して白紙委任状を濫用した場合でも、委任者は契約の相手方に対し、濫用された通りの内容の義務を負うと判断した最高裁判例もあります。

 

事故に対する対応

まず、捨印を押す場合は慎重に判断しましょう。
出来る限り捨印は押さずに、仮に不備があった場合は書類を提出した所に出向くか、または担当者に来てもらい、その都度訂正印で対処するほうが安全です。
次に、捨印を押した書面の写しをもらっておくようにしましょう。
後に、書面が偽造されるなどして紛争になった場合に、有力な証拠となります。
また、通常の訂正印と区別できるように、捨印であることを明記しておきましょう。
捨印であることを明記することによって、欄外方式の訂正印として扱われ、契約の重要部分が改ざんされるのを防止することができます。
また、実際に契約交渉に立ち会った相手方の担当者の署名・押印と当日の日付の記入を求めるのも有効だと考えられます。

白紙委任状についても、交付自体に慎重であるべきです。
極力、白紙委任状の作成・交付は避けるべきでしょう。
作成する場合には、委任状の写しをもらっておくようにしましょう。
また、第三者を交えて委任契約を締結する、大まかでもいいので代理人に与える権限の範囲を明確にし、書面に残しておくなどして白紙委任状が悪用されないように慎重に文書を作成しましょう。

 

まとめ

捨印が押された契約書、白紙委任状は、それぞれ写しをきちんと保存しておいて、あとで紛争になった場合に、無断で変更や加筆された箇所を指摘できるようにしておきましょう。
また、第三者を交えて契約を締結する、代理人に与える権限の範囲を明確にしておくなどして、捨印が押された契約書、白紙委任状が悪用されないように、慎重に文書を作成しましょう(そもそも白紙委任状は危険です)。